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超個人的「火花 又吉直樹」論

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こんにちは

FDA移行トレーニング生のK.Yです。
9月に入ってから雨ばかりで憂鬱になりますよね・・・

そんな時は家の中で読書もいいですね。

私はこの間芥川賞受賞作、又吉直樹さん作「火花」読みました。

今回の受賞については疑問を持つ人もいるし
作品に対する評価も賛否両論。好意的な意見の一方で某大物キャスターや大御所
歌手などからは「純文学という感じがしない」などど酷評されています。

私自身はどうかというと
本好きで2000冊の本を読破。中でも太宰や芥川に造詣が深く膨大な語彙を持つ又
吉さんならではの文章力、元々持っている繊細な感性を深く感じました


「純文学」的じゃないと感じるとしたら二人の会話が「大阪弁」だからというの
もあるかもしれないですね。
笑いのネタもあまり上品でないものもありますし・・

ただ、二人のやり取りに出てくる「蝉川柳」は「俳句」の先生に師事し本まで出
しているだけあって上手いです。(また余談ですが又吉さんはある番組で辛口批
評で有名な夏木先生という俳句の先生から絶賛されてました。

お題は
「新幹線と夏休み」

又吉さんの書いた句は「故郷(ふるさと)の声はしらせて 涼新た」

先生曰く
「日本語の言葉同士がどう機能するかよく分かっている人の句」ということでし
た)




熱くなってる?又吉さんの事結構好きだな私(笑)

脱線終了、
冒頭はこう始まります。

「大地を震わす和太鼓の律動に、甲高く鋭い笛の音が重なり響いていた。
熱海湾に面した沿道は白熱の激しい陽射しの名残を夜気で溶かし、浴衣姿の男女

家族連れの草履に踏ませながら賑わっている。」

平成26年に書かれたと言われなければ太宰や芥川の時代の小説かと思わせる文章
ですね。一文が長くてまどろっこしいという印象を与えるかもしれないですが
私ははっきりと情景が目に浮かびました。

物語は
夏の熱海の花火大会での徳永と神谷の出逢いから始まり

最後はその思い出の熱海の花火大会で再びお笑いへの道はまだ閉ざされていない
ことに気付くところで終わっています。

余談ですが私はこの熱海の花火大会を実際に観ているので

「幻のような鮮やかな花火が夜空一面に咲いて、残滓を煌めかせながら時間をか
けて消えた。

という一文も好きです。




ストーリー的にはどちらかというと地味で
ご自身がモデルである徳永という売れない漫才師と彼が慕う破天荒な先輩神谷の
関係性がメインで進みます。

徳永は笑いに対して「誰かを傷つけたりしないか。下ネタはしたくない」等と悩
んだりしますが
神谷は「笑わせる為なら性的表現や過激なパフォーマンスも厭わない」破天荒さ

言わば正反対と言っていいのですが
根っこの部分では似ているのだなと思わされます。不器用なところもそう。

神谷は「借金をしてでも先輩が後輩におごる」という昔ながらの師弟関係をかた
くなに守り
実際それで消費者金融の取立てから追われ、支えてくれていた女性にも出て行か
れる出ていかれてしまいます

徳永はせっかく売れた所で合方に去られてしまい一人で笑いをするのを諦めて就
職。

ただ、神谷はどんなにどん底になっても笑いに対しての情熱はすさまじく○乳の
手術まで・・・
ここまでくると神谷を尊敬している徳永も引くんですがw
ただ、ラストが「いた」でなく「いる」という現在形で終わっている事から
「今後」のこの二人の人生は続いていくんだなと・・そしてこの二人はずっと繋
がっていくのだろうなと思わされるものでした。

さて、今少しでの話題の本は映像化がお約束になっていますが

今人気のストーリー展開が速くて伏線からの回収が小気味いい読後感の小説と違
い、
登場人物たちも愚直で、会話も意味が分かりづらかったり
華やかな恋愛話も無いので

膨らませるなら神谷が転がり込んでいた女性のエピソードかなとか破天荒な神谷
は誰が演じるんだろうなどと思いを巡らせるのも楽しみの一つですね。

そして
芥川賞作家として「又吉先生」と呼ばれテレビや雑誌にも引っ張りだこの又吉さ
ん。
今後もお笑い主体で、でも小説も書き続けると言っておられますが

「次回作」で真価を問われることになるので相当のプレッシャーだと思います。
そういう私も「次回作はお笑い芸人の話でなくてまったく別のジャンルの話だと
いいな」と期待しています。


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